2013年8月7日水曜日

お酒の話 2

 昨日の続き。というか、ここからが本題。

 今から7、8年前、当時の僕は社会のルールに従順なサラリーマンで、世間並以上の高給を拝受することを当たり前だと思っていた、おおバカものだった。そしてそんな僕がたまたま買ったのが、マッカランと言うモルト・ウイスキーだった。特に理由は無い。女性がブランド品に手を伸ばすのと同じだ。高価なものを買い、そんなつまらないことで自分の価値が高まるという、とても恥ずかしい勘違いをしていたのだ。しかしこの勘違いが、その後の僕を変えた。

 マッカランは、信じられないくらい美味かった。スパイシーな甘さ(あり得ない表現だと思われるかもしれないけれど、実際そうなのである)の向こうに、果てしなく広がる草原が見えた。いや、草原だけではない。あるときはそれは大海原であり、あるときそれは太古の宮殿だったりした。要するに小さな想像を大きく膨らませてくれるのだ。

 すっかり気に入った僕は、その”モルト・ウイスキー”とやらが何たるものかを調べることにした。詳しいことは割愛するけれど、要するに、スコットランドでつくられた、麦芽を原料にした蒸留酒である。しかも様々な銘柄があり、それぞれが個性的な味を醸し出しているという。さっそく僕は、多種多様なモルト・ウィスキー(正確にはシングル・モルト・ウィスキー)を買いあさった。そしてその奥深い世界に、みるみるはまり始めた。

 僕が最も衝撃を受け、今もなお愛してやまないモルト・ウィスキーがある。一つは前述のマッカランであるが、そのマッカラン以上に愛する酒がある。それは、”ラガブーリン”と、”ラフロイグ”という酒だ。(拙著「出来損ないの天使」に、確か登場したと思う。バカなのではっきりとした記憶は無いけれど・・・)
 強烈である。消毒薬にもした刺激臭、ひとたびそれが喉を抜けると、たちまち、右脳をたたき起こす劇薬に姿を変える。特に強烈なのが、ラフロイグ。まるで荒馬のようなのだ。そして少し上品で、無理やり例えるならば、ブレーキの効かないフェラーリのような酒、それがラガブーリンである。(実際、とても高い)

 そしてこいつら素敵な酒が、僕の人生までをも変えてしまった――

 今から6年前、僕は転職した。世に言うヘッドハンティングというやつである。そしてそれから3年後、心身共に壊れた僕は会社を辞め、プータローになった。今からちょうど3年前のことである。僕が小説を書き始めたのは、さらにそれから2ヶ月後のことだった――。

 長くなりそうなので、今日はここまで。

 大変申し訳ございません!

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