2013年8月27日火曜日

WikIを見て泣いてしまった話 ―見世物小屋―

 思うところあって、先日アマゾンから、江戸川乱歩のある作品を購入した(もちろん電子書籍)。それは、

 人でなしの恋

 という、短編を集めたやつだ。毎晩寝る前に少しずつ読んでいるのだけど、昨夜ようやく一編目を読み終えた。

 百面相役者

 という一編だ。実は、読み始めたときは意外に思った。て・に・お・は・が抜けるという、誤字が散見されたからである。しかも、どこか表現がぎこちない。

 と思っていたのもほんの数ページ

 気づくと、僕は物語の中にどっぷりと浸かっていた。そして想い出した。小学生の頃、読書嫌いだった僕が唯一はまった、あの小説のことを。「怪人二十面相」だ。寝る間を惜しんで読んだあのときと、同じような感覚を味わっていたのだ。

 解説によると、百面相役者と言う作品は、大正14年から15年に書かれた作品のようだ。信じられない。大げさではなく、鳥肌が立った。遙か時をこえ、まるで今まさにそこにいるかのような臨場感。最初に感じたぎこちなさも、実はこの臨場感を演出するための罠だったわけだ。江戸川乱歩という作家、やはり希有の天才だ――そんなことを、しみじみと感じた次第である。

 ところで、江戸川乱歩の話はまたの機会にということで、今日ご紹介したいのはそのことではない。この「百面相役者」に出てくる”見世物小屋”のことである。神社の境内にしつらえられた見世物小屋、若い人たちにはわからないと思うけれど、僕が幼少の頃には、まだそれが存在していた。大人たちには「ぜったいに入っちゃだめだからな」と念を押され、実は僕も一度も入ったことがない。(たぶん……)

 世にも恐ろしいヘビ女、だとか、見るもおぞましい怪獣だとか――怖いもの見たさの好奇心を煽る看板の前で、「お代は見たあとで」と、怪しげなおっさんが叫んでいたものだ。そんなことを想い出しながら、ふと僕はあることに疑問を持った。

 あの見世物小屋の中にはいったい何がいて、何をやっていたんだろう?

 ずうっとタブーとされていたせいか、そのことを調べようなどと思ったことは、これまで一度もなかった。でもこの本を読んで、どうしても知りたくなった。さっそく僕はググった。そしてあるサイトに辿り着いた。Wikiである。

 小心者で気弱な僕には、これ以上文章を綴ることはできない。とにかく感動し、そして反省した。辛いとか、苦しいとか、僕にその言葉を口にする権利はないのだと。
 以下が、そのWikiへのリンクである。

 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E6%9D%91%E4%B9%85%E5%AD%90

 何かあると自分の権利だけ主張し、不快なことはみな他人のせいにする。そんな大人が、以前より少し増えてしまったような気がする。とても悲しいことだ。せめて未来ある子供たちには、そんな大人に染まらないで育って欲しい。そう願う今日この頃なのである。そのためにも、大人たちには今一度、権利に課せられた重い責任のことを、しっかりと考えてもらいたい。ということで、今日も自分にひと言――

 そう思ってるんなら、まずはお前が変われよ。

 そのとおりである。反省だけなら、サルでもできる。

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