2014年1月1日水曜日

久しぶりの映画の感想: 最強の二人【Intouchables】

 久しぶりの映画の感想です。書きたくなったのにはもちろん理由があります。まあそれはおいおいということで、まずは不満を。それは邦題です。最強の二人――

ちょっと酷すぎる……

 なんと言えばいいのか、この映画の本質を曲げてまで商業主義に走った腹黒い連中の、薄汚い顔が浮かんでしまうのです。最初にこれを見た僕なんて、偶然出会った富豪と貧民が紡ぐサクセスストーリーを勝手に思い浮かべてしまいました。でも全然違います。だから敢えて原題を書いておきました。そう、Intouchables(ザントゥシャーブル)です。ではこれはどういう意味なのか、実は僕にもよくわかりません。

お、おいおっさん……

 うるさい、とても難しいんだよ! で映画を観終わった僕はこれを、『誰にも侵すことの出来ない二人の絆』と勝手に解釈することにしました。まあ、こんなんじゃとても映画の題目には使えないでしょうけれどね。

 と言うことで、ようやく本題である映画の感想に。まず最初に浮かぶ言葉は、

とにかく美しい

 です。美しいと言っても、綺麗という意味では決してありません。実際に、富豪役のフランソワ・クリュゼが涎を垂らしたり、オマール・シー扮する貧しい黒人青年が薄汚いスラム街で過ごす様子などがとてもリアルに描写されていたりします。一般的には汚い絵なのでしょうけれど、でも美しいんです。これはもう、先の二人の俳優の卓越した演技力と、監督を初めとする制作スタッフの力量のおかげに他ならないのではないでしょうか。すこし乾いた映像が刹那な世界を創造し、絶妙な音楽がそれをさらに盛り上げる。気がつくと、二人の世界にどっぷりと嵌まり込んでしまっているのです。

 ではここで少し音楽の話を。この作品には二つの、とても印象的な楽曲が使われています。一つは主題歌でもある、Ludovico EinaudiのNuvole Biancheです。では少し聞いてみることにしましょう。




 どうですか? とても刹那ですね。でもこれだけじゃただの哀しい映画になってしまいます。そこでこの曲の登場なわけです。いきなりぶっ飛びますよ。


 そう、あのEarth, Wind & FireのSeptemberです。同情や表層的なつきあいに辟易していた富豪の目を覚ますべく、貧しい黒人が無理やり聞かせる曲です。もう最高ですね。
 これらの、ある意味対照的な楽曲が見事に使い分けられていて、飽きることなく物語に没入できるのです。

 もっともっと語りたいことは山ほどありますけれど、この辺でそろそろ終わりにしたいと思います。

も、もう終わりかよ (゚Д゚)

 まるでわかっちゃいないな、君は――。これ以上語ったら、これから観る人の楽しみが半減しちゃうだろ!
 ということで感想はこれくらいでやめておきますが、とても素晴らしい映画でした。ストーリー自体は、そんなにドラマチックじゃありません。むしろ陳腐と言った方がいいかもしれません。でも、いや、だからこそ素敵なのです。シンプルであるがこそ、登場人物それぞれの心情を深く掘り下げることができる。奇抜なストーリーも悪くはありませんが、たまにはこういう美しい作品を観て、心の洗濯をすることも必要だと、改めて思った次第なのであります。


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