2017年8月5日土曜日

最高のコスパを求めて ~少ない出費で最大限にウィスキーを愉しむ術~

 ウィスキーの伝道者こと、如月恭介です。今日は皆様に、小生のウィスキーの楽しみ方をご紹介したいと思います。題して、『最高のコスパを求めて』
 話に入る前に小生とウィスキーとの歴史から語る必要がありましょう。初めてウィスキーというか酒を本格的に飲んだのは、大学に入ってからでした。死ぬほど飲みました。いや、飲まされました。元来下戸だった私が学生寮に入り、最初に経験したのが、2日酔い地獄でした。毎日毎日朝方まで、先輩たちに無理矢理酒宴につきあわされたのです。学生寮の屋上に出て、遠くを走る新幹線を見ながら、もう田舎に帰りたい、何度もそう思ったものです。時には涙を流したこともありました。
 そして月日が流れました。
 それから1年もしないうちに、いつの間にか小生は、酒なしでは生きていけない身体になってしまいました。よく酒が飲めるかどうかは遺伝だと言う人がいますけど、たぶん例外もあるのでしょう。私の中の、長い間眠っていた恐るべき能力が、見事に開花してしまったのです。
 それからうん十年、とにかく飲みました。かの有名な漫画「レモンハート」に感化されてカクテルにはまったこともあります。ジンやらテキーラやらウォッカやらのボトルを狭い部屋に並べ、毎夜のようにカクテルを作っては飲みふけりました。またあるときは焼酎にもはまりました。
 こうして数々の酒遍歴を経た後、今はウィスキーにはまっています。しかし結婚して子どももでき、しかも世の中は不景気で給料は減る一方です。趣味の小説も鳴かず飛ばずでいっこうに売れる気配が見えません。つまり出るお金は増えても、入ってくるほうはさっぱりというわけです。
 かつてはマッカランやストラスアイラやラガブーリンといった高価なウィスキーをなんの躊躇いもなく飲んだ小生ですが、もはやそれも華やかかりし過去のこと、奢れる者も久しからずなわけです。
 もちろんお金がないからと言って諦める小生ではありません。どんな逆風の中にありながらも、それに打ち勝ち、力強く生きていくのが、これからの社会に求められる資質なのではないでしょうか。
 ということで、試行錯誤しながら、自分なりの、最高のコストパフォーマンスのウィスキーを見つけつつあります。話が長くなりましたが、皆様にもそれをご紹介したいと思います。

1.アイリーク
 何度も書くのが面倒くさいので詳細はことらをご覧ください。ここをクリック
 ひと言で言えば、高級ウィスキー・ラガブーリンの代用品です。といっても、そのパンチには本家を上回るほどのものがあります。そしてこのウィスキーのすばらしいところは、単体で飲んで美味しいだけではなく、少し水っぽい他のウィスキーに加えることで、すっかり別物に変えてしまう恐るべき能力を秘めていることです。

2.シーバスリーガル
 この名前をみて「えっ、高い酒じゃん」と口をとがらせた不敬な輩もいるかもしれません。それはあなたが無知なだけです。実はこのウィスキーのメインモルト(混ぜるモルトウィスキーの中でメインとなるもの)が、あのストラスアイラなのです。当然その味もストラスアイラの風味を引き継いでいます。そう考えて飲むと、決して高くはありません。むしろ安いくらいなのです。とは言っても庶民にはギリギリ手が出せるレベルの値段で、小生は何か特別なこと、たとえば小説がいつもの2倍売れたとか、そういうときだけ、ちびちびとなめるように飲むようにしています。

3.バランタイン12年
 まあ小生が語るまでもなく、とても有名なウィスキーですね。でも気をつけなければなりません。これよりさらに格安の、バランタイン・ファイネストというウィスキーがあります。同じバランタインですが、全くの別物です。このファイネストの方は水っぽくて飲めたものじゃありません。でもこの12年は違います。スパイシーで辛口で、飲むと、生きてて良かったと思うくらいに幸せな気分に浸れるのです。

4.その他
 先にご紹介した1から3は格安とはいえ、どれも2千円を超え、庶民の財布には決して優しいとは言いがたいのも事実です。そこでおまけで、味は少し落ちますが、コストパフォーマンスの最高なウィスキーをご紹介いたしましょう。
 それは、エンシェント・クラン(ANCIENT CLAN)というブレンデッド・ウィスキーです。

 大抵どこでも千円前後で入手できる安価なウィスキーですが、パンチが効いていて、それでいて雑味も少ないすばらしいウィスキーです。ぜひ試してみられてはいかがでしょうか。

 まだ他にたくさんありますが、今日はこれくらいにしといてやりましょう。

 最後に、必ずと言っていいほどウィスキーネタの登場する小生の小説ですが、先月発売した最新作もそれに違いません。自分で言うのもなんですが、面白いですよ。是非読んでみてください。


 ではまた!

2017年8月2日水曜日

KENPに関する近況報告(amazon Kindle Unlimited)-7月度-

 Kindleの読み放題(amazon Kindle Unlimited)の7月度の既読ページ数(KENP)の報告です。約66,500でした。6月に対しては微増となりました。

 この数ヶ月をまとめますと、
 2月:40,600
 3月:42,700
 4月:55.100
 5月:54,300
 6月:66,200
 7月:66,500

 となり、引き続き堅調に推移しているように見えます。ただし7月は新作が加わってのこの数字であり、既存の作品の既読ページ数はかなり減っていることになります。といってもこれには理由があり、大手出版社による(コミック等の)無料サービスが提供されたことで、7月の後半にカウント数が大幅に落ちてしまったことがあります。
 しかしその影響もそろそろ薄れ始めたようで、昨日は久しぶりの4000超えを達成しました。今月は夏休みということもあり、どういう結果になるかとても楽しみです。

 以上、報告でした。

2017年7月6日木曜日

KENPに関する近況報告(amazon Kindle Unlimited)-6月度-

 Kindleの読み放題(amazon Kindle Unlimited)の6月度の既読ページ数(KENP)の報告です。約66,200でした。
 この数ヶ月をまとめますと、
 2月:40,600
 3月:42,700
 4月:55.100
 5月:54,300
 6月:66,200
 となり、引き続き上昇傾向にあるようです。ちなみに7月はさらに勢いを増しており、5日が経過した時点ですでに14,000を超えております。
 ところで、先日新作を発表しましたが、残念ながらこの作品はあまりKENPには寄与していません。これからに期待したいと思います。

 以上、報告でした。

2017年7月1日土曜日

新作の発売を開始しました

 先日お知らせしたとおり、本日、新作の発売を開始しました。Kindle読み放題の対象です。



 それでは、作品を紹介させていただきます。


日はまた昇る、君の心に


 粉飾決算、横領、脱税、法令違反―― 世間を騒がす企業不祥事の数々。しかし皆の目にする報道はおよそ事実とはかけ離れた虚像にしか過ぎない。
 ニュース等では語られない生々しい経済の実態。
 利益至上主義を正当化するための現代資本主義、それを構築し維持する資産家や権力者、あるいは既得権益者たち。遠心分離機にかけたように富は二極化し、道義や誠意は、拝金主義の下に蔑ろにされる。
 本作品は、架空の経済小説である。と同時に、経済・社会の矛盾に焦点を当て、その矛盾に果敢に立ち向かう人たちの熱い姿を描いた、人間ドラマでもある。

【あらすじ】 
  沢井祥子は今をときめく人気週刊誌『ジャパン・ウィークリー』の記者である。東京都知事の公金横領の疑惑を追っていた彼女の元に、新たな仕事が舞い込んでくる。 
  タックスヘイブンの法律事務所から漏洩した顧客リストの調査――  
 世間を揺るがす一大スキャンダル――しかしそれは、それから起こる数々の大事件の序章にしか過ぎなかった。 
  脱税、横領、粉飾決算、法令違反――相次ぐ不祥事と、それに続く企業買収。その舞台裏に、彼女はある男たちの存在を知る。そしてそこには誰も想像しなかった驚くべき秘密が隠されていた――

※あまり経済のことに詳しくない方にも楽しんでいただけるよう、専門用語は極力わかりやすく解説し、むしろ経済用語の参考書として活用いただき、これからの経済ニュースを面白く読んでいただきたい、そういう思いも込めて書いております。

※ 250円、Kindle読み放題対象
※ 書下ろし初公開
※ ページ数:約340ページ(40字 x 16行の文庫本換算)


以下、冒頭部分のご紹介です。

一 タックスヘイブン

 五月初旬にしては暑い日だった。沢井祥子は浜松町駅の改札を抜け、勾配のきつい階段を小走りに駆け下りた。駅前の大通りに出ると、額の汗を拭い、目を細めながら顔を上げた。巨大なコンクリートの塊が何本も、黄色い陽光を背にして、まるで摩天楼のように黒く浮かんでいる。
「三十度近くあるんじゃないの……」
 誰に言うでもなくぼやくと、祥子はふたたび歩を進めた。
 沢井祥子、三十一歳――
 歳のわりに若く見えるのは、化粧っ気のない童顔が理由かもしれないし、あるいはジーンズにスニーカーといったラフな服装がそう思わせるのかもしれない。といっても別に意図してそうしているわけではない。仕事がら、必然とそうなるのだ。
 五分ほど歩いて社に戻ると、事務所は大変な騒ぎになっていた。ドアを開けるなり、編集長の大嶋のだみ声が響き渡った。
「山下、すぐに高木電脳を洗ってくれ! 大竹、お前はソフトブレインだ!」
「はいっ!」
 ほぼ同時に返事をすると、二人は鞄をひったくり、脱兎のごとく駆け出した。茫然と立ち竦む祥子に向かって大嶋が声を上げた。
「おう、沢井か。で、どうだった?」
「真っ黒ですね。完全に政治資金規制法違反です」
「やっぱりな」
「これから裏を取ります。きっと、もっといっぱい出てきますよ」
 彼女はいま追いかけている案件――とある政治家による政治資金の私的流用の疑惑に関する調査に、確かな手応えを感じていた。とうぜん「よし、徹底的にやれ」という応(こた)えが返ってくるだろう、そんな彼女の期待は、しかし見事に裏切られた。
「いや、それは後回しだ。それより大変なことになった。ほら――」
 大嶋が机の上のコピーを手に取り、彼女に向けて振った。その見出しを見た瞬間、祥子は首を傾げた。
「ケイマン・リークス? なんですかそれ?」
「いいから読んでみろ」
 祥子はコピーを手に取り、急いで目を通した。仕事がら速読は彼女の得意とするところだ。数十秒で内容を把握すると、祥子は顔を上げた。大きく見開いた目に驚きの様子がうかがえる。
「すごいのが出てきましたね……こんなものがいったいどこから?」
「ケイマンの法律事務所だ」
「法律事務所?」
「表向きはな。でも実態は、オフショア企業の口座の開設や、そこでの顧客の資産管理をするのが本業だ。まあ資産管理といっても、アレだ。租税回避や資産隠しの指南だとか、あるいは資金洗浄の手助けとかいった、極めて違法性の高いものだ。で、見てのとおり、その顧客リストが流出したってわけだ」
「そんなものがどうして流出したんですか?」
「それはわからん。フランスのリール地方のローカルな新聞社に、匿名で送られてきたそうだ。おそらくハッキングか、内部告発といったところだろう。でもそんなことはどうでもいい。問題はその中身だ。なにしろこの法律事務所が手がけた二十万社以上ものペーパーカンパニーや、その所有者の名前が、いっさいがっさい記されているんだ。前代未聞のスキャンダルだ」
「でも本物なんですかね、そのリスト……。ねつ造ってことは考えられないんですか?」
「まずない。漏洩した情報にはこれらの信憑性を裏付ける資料が山ほど含まれているんだよ。電子メールのやりとりだとか、機密文書の写しだとか。それに、契約書もだ」
「そんなものまで……」
「とにかく我々は最優先でこっちの方の案件に取りかかることにした。大物の高木電脳とソフトブレインはいまさっき山下と大竹に任せたところだ。それから三栄銀行も佐々木に当たらせることにした。お前は名簿を調べて、それ以外のめぼしいターゲットをリストアップするんだ。資料はサーバーに入れてある。すぐに取りかかってくれ」
「は、はい」
 少し緊張した面持ちで返事をすると、祥子は自分の席に急いだ。
 座る前にパソコンの電源を入れ、それからゆっくりと腰を下ろして、じっと画面に見入る。しかしこういうときに限って予期せぬことが起きるものだ。
「えーっ、なによもうっ!」
 システムの自動更新の開始を告げるメッセージに、思わず祥子の口から愚痴がこぼれた。
 それから五分ほどしてようやくシステムが立ち上がると、五十通近くもの新着メールは後回しにして、さっそく彼女は目的のファイルを開いた。
「すごい量ね……」
 それはそうだ。なにしろ二十万件以上もの顧客情報が収められているのだ。わかってはいても、実際にそれを目にするとどうにも驚きを禁じ得ない。ひととおり目を通すだけでも大変な作業だ。祥子は、まずは日本人が関係していそうな会社だけを抜き出すことにした。
 夢中で資料に向き合い、一息ついたときにはすでに五時間ほどが経っていた。時計を見ると夜の八時、窓の外にはすっかり帳が降り、隣のビルには黄色い明かりが煌々と灯っている。
 少し考えた後、祥子はパソコンの電源を落とし、黒いナイロン製のバッグにそれを押し込んだ。長丁場だ。まずは英気を養って、続きは自宅ですることにした。
「お先です」
 反応がないことくらいわかってはいたが、いちおう声をかけた。あんのじょう皆仕事に夢中で、顔を上げる者さえいない。せいぜい編集長がチラリと視線を向けたくらいのものだ。とはいってももう慣れっこで、そんなことはまったく気にならない。ここはそういう世界なのだ。
 浜松町駅で山手線に乗り、品川駅で東海道線に乗り換える。横浜駅で下りると、少し歩き、「七(しち)転(てん)八(はっ)起(き)」という名前の定食屋ののれんをくぐった。
「おう、いらっしゃい」
 馴染みの声がする。禿げ上がった頭に白いハチマキ。店の主(あるじ)がカウンターの奥の厨房で目尻にしわを寄せ、いかにも人の良さそうな笑顔を向けている。
「ずいぶんはええじゃねえか。で、いつものやつからいくかい? キンキンに冷えてるぜ」
「ううん、今日はお酒はなし。鯖の煮付け定食をお願い」
「おや、めずらしいじゃねえか」
「しょうがないわ。これからまだ仕事だし」
 祥子は二人がけの小さなテーブルの椅子を引いた。腰を下ろすと、小太りの中年の女将が冷たいお茶の入ったグラスを運んできた。
「お疲れさま。といっても、まだこれから仕事だったわね。大変ね、キャリアウーマンってやつも」
 これまた人の良さそうな笑顔でそう言うと、女将はグラスをテーブルの上に置いた。
「からかわないでよおばさん。キャリアウーマンどころか、とんだ肉体労働よ」
 祥子が色白の顔に苦笑いを浮かべると、女将は豊満な体を揺すって笑った。
「なに言ってるの、今をときめくジャパン・ウィークリーの記者が」
 すると店の奥から主の怒鳴り声が飛んできた。
「こら登(と)美(み)子(こ)、迂闊なこと言うんじゃねえ。誰かに聞かれたらどうすんだ。なんたってアレだ、ト、トップシークレットってやつだよ」
「いいのよ、おじさん。他(ほか)にお客さんもいないことだし。あっ、ごめんなさい――」
 あわてて取り繕うも、時すでに遅し、主が皮肉交じりにぼやいた。
「ああ、どうせ客は祥子ちゃんだけだよ」
 機嫌を損ねた子供のような物言いに、つい祥子は吹き出してしまった。
 しかし店の主人の言ったことはそう間違ってはいない。ジャパン・ウィークリーはここ数年のスクープの連続で、世間に知らない者のいないくらいにその名声を馳せていた。とうぜん恨みも買っているだろうし、その記者であるとの噂が広まれば色々とやりづらくなるのは想像に難くない。
 食事を終えると定食代の五百円を支払い、祥子は店を後にした。そこから歩いて五分ほどのところが、彼女の住むアパートだ。閑静な住宅街、と言いたいところだが、実際にはどぶ川沿いに安アパートの立ち並ぶ古びた街だ。薄闇を照らす街灯の明かりに、「リバーサイドハイツ・横浜東」と書かかれた表札がぼんやりと浮かんでいる。
 四十平米の1LDKで家賃八万円、ターミナル駅から徒歩十五分という立地条件を考えれば格安だ。もちろんそれには理由がある。リバーサイドとは名ばかりでアパートのそばを流れるのは異臭を放つどぶ川だし、アパートはいまどきめずらしいモルタル造りの二階建てだ。しかも築二十年ときている。といっても安アパートに住んでいるのは、お金がないからというわけではない。実際彼女の収入は世間の一般サラリーマンのそれをはるかに超えていたし、貯蓄もそれなりにある。彼女がここを選んだのは、ただ、必要以上の贅沢を好まないという彼女の性格によるもの以外に何もない。
 アパートの外階段を乾いた音を響かせながら駆け上り、祥子は鼠色のドアに鍵を押し込んだ。ドアを開け部屋に入ると、白いスニーカーを脱ぎ捨て、まっすぐ机に向かった。バッグから引っ張り出したパソコンを机の上に置き、電源を入れ、さっそくキーボードを叩き始める。
 ようやく一息ついたのは、それから五時間も過ぎてからだった。時計を見るともう深夜二時。
「お風呂にでも入るかな」
 ひとり呟くと、祥子は腰を浮かした。
 熱いシャワーを浴び、濡れたストレートの黒髪をバスタオルで拭きながら、祥子は小さな冷蔵庫の扉を開けた。うっすらと白く霞む狭い空間。そこにはびっしりと缶ビールが並び、それ以外には何も見当たらない。その缶ビールをひとつ掴むと、彼女はふたたび机に戻った。ビールに口をつけ、後回しにしておいたメールのチェックを始める。といってもほとんどがゴミ箱行きだ。それもそうだ、重要な案件であればとっくに電話で連絡がきているに違いないのだ。メールのチェックを済ませると、今度はニュースサイトを開いた。彼女の部屋にはテレビはない。理由は至って簡単だ。スポンサーの利害によってよけいな脚色がされた情報は、彼女のような者にとっては百害あって一利なし。調査の勘を鈍らせるだけなのだ。
 今夜の、いやもう朝方といった方がいいかもしれない――のネットのニュースサイトは例の政治家の不祥事の話題で持ちきりだ。そう、つい昨日まで彼女が追っていた、あの政治資金の私的流用の事案である。
「まったく遅れてるわね……」
 彼女に言わせれば、それはもはや過去の出来事に過ぎなかった。もう完全に詰んだ将棋のようなものだ。この先は放っておいても勝手に話が進んでいくに違いない。しかもそれは、たかだか強欲な政治家ひとりに引導を渡すに過ぎないことだ。でも今度の事案はスケールが違う。世界の常識をひっくり返してしまうほどの、今世紀、いや、近代経済史上最大の大事件に発展する可能性すら秘めているのだ。
「おもしろくなってきたわね」
 早くも半分近くに減った缶ビールを片手に、祥子は、微かに火照った顔に不敵な笑みを浮かべた。

2017年6月24日土曜日

来週末(7月1日)、新作を発表します

 かねてよりお知らせしていたとおり、来たる7月1日(土曜日)、新作を発表することに決定しました。(アマゾンでの手続きの関係上、多少前後する可能性はありますが)
 表紙も(まだ暫定ではありますが)一応できあがりました。背景の写真は小生の撮影によるものです。

 それでは、改めて作品を紹介させていただきます。

日はまた昇る、君の心に


 粉飾決算、横領、脱税、法令違反―― 世間を騒がす企業不祥事の数々。しかし皆の目にする報道はおよそ事実とはかけ離れた虚像にしか過ぎない。
 ニュース等では語られない生々しい経済の実態。
 利益至上主義を正当化するための現代資本主義、それを構築し維持する資産家や権力者、あるいは既得権益者たち。遠心分離機にかけたように富は二極化し、道義や誠意は、拝金主義の下に蔑ろにされる。
 本作品は、架空の経済小説である。と同時に、経済・社会の矛盾に焦点を当て、その矛盾に果敢に立ち向かう人たちの熱い姿を描いた、人間ドラマでもある。

※ 250円、Kindle読み放題対象
※ 書下ろし初公開
※ ページ数:約340ページ(40字 x 16行の文庫本換算)


以下、冒頭部分のご紹介です。

一 タックスヘイブン

 五月初旬にしては暑い日だった。沢井祥子は浜松町駅の改札を抜け、勾配のきつい階段を小走りに駆け下りた。駅前の大通りに出ると、額の汗を拭い、目を細めながら顔を上げた。巨大なコンクリートの塊が何本も、黄色い陽光を背にして、まるで摩天楼のように黒く浮かんでいる。
「三十度近くあるんじゃないの……」
 誰に言うでもなくぼやくと、祥子はふたたび歩を進めた。
 沢井祥子、三十一歳――
 歳のわりに若く見えるのは、化粧っ気のない童顔が理由かもしれないし、あるいはジーンズにスニーカーといったラフな服装がそう思わせるのかもしれない。といっても別に意図してそうしているわけではない。仕事がら、必然とそうなるのだ。
 五分ほど歩いて社に戻ると、事務所は大変な騒ぎになっていた。ドアを開けるなり、編集長の大嶋のだみ声が響き渡った。
「山下、すぐに高木電脳を洗ってくれ! 大竹、お前はソフトブレインだ!」
「はいっ!」
 ほぼ同時に返事をすると、二人は鞄をひったくり、脱兎のごとく駆け出した。茫然と立ち竦む祥子に向かって大嶋が声を上げた。
「おう、沢井か。で、どうだった?」
「真っ黒ですね。完全に政治資金規制法違反です」
「やっぱりな」
「これから裏を取ります。きっと、もっといっぱい出てきますよ」
 彼女はいま追いかけている案件――とある政治家による政治資金の私的流用の疑惑に関する調査に、確かな手応えを感じていた。とうぜん「よし、徹底的にやれ」という応(こた)えが返ってくるだろう、そんな彼女の期待は、しかし見事に裏切られた。
「いや、それは後回しだ。それより大変なことになった。ほら――」
 大嶋が机の上のコピーを手に取り、彼女に向けて振った。その見出しを見た瞬間、祥子は首を傾げた。
「ケイマン・リークス? なんですかそれ?」
「いいから読んでみろ」
 祥子はコピーを手に取り、急いで目を通した。仕事がら速読は彼女の得意とするところだ。数十秒で内容を把握すると、祥子は顔を上げた。大きく見開いた目に驚きの様子がうかがえる。
「すごいのが出てきましたね……こんなものがいったいどこから?」
「ケイマンの法律事務所だ」
「法律事務所?」
「表向きはな。でも実態は、オフショア企業の口座の開設や、そこでの顧客の資産管理をするのが本業だ。まあ資産管理といっても、アレだ。租税回避や資産隠しの指南だとか、あるいは資金洗浄の手助けとかいった、極めて違法性の高いものだ。で、見てのとおり、その顧客リストが流出したってわけだ」
「そんなものがどうして流出したんですか?」
「それはわからん。フランスのリール地方のローカルな新聞社に、匿名で送られてきたそうだ。おそらくハッキングか、内部告発といったところだろう。でもそんなことはどうでもいい。問題はその中身だ。なにしろこの法律事務所が手がけた二十万社以上ものペーパーカンパニーや、その所有者の名前が、いっさいがっさい記されているんだ。前代未聞のスキャンダルだ」
「でも本物なんですかね、そのリスト……。ねつ造ってことは考えられないんですか?」
「まずない。漏洩した情報にはこれらの信憑性を裏付ける資料が山ほど含まれているんだよ。電子メールのやりとりだとか、機密文書の写しだとか。それに、契約書もだ」
「そんなものまで……」
「とにかく我々は最優先でこっちの方の案件に取りかかることにした。大物の高木電脳とソフトブレインはいまさっき山下と大竹に任せたところだ。それから三栄銀行も佐々木に当たらせることにした。お前は名簿を調べて、それ以外のめぼしいターゲットをリストアップするんだ。資料はサーバーに入れてある。すぐに取りかかってくれ」
「は、はい」
 少し緊張した面持ちで返事をすると、祥子は自分の席に急いだ。
 座る前にパソコンの電源を入れ、それからゆっくりと腰を下ろして、じっと画面に見入る。しかしこういうときに限って予期せぬことが起きるものだ。
「えーっ、なによもうっ!」
 システムの自動更新の開始を告げるメッセージに、思わず祥子の口から愚痴がこぼれた。
 それから五分ほどしてようやくシステムが立ち上がると、五十通近くもの新着メールは後回しにして、さっそく彼女は目的のファイルを開いた。
「すごい量ね……」
 それはそうだ。なにしろ二十万件以上もの顧客情報が収められているのだ。わかってはいても、実際にそれを目にするとどうにも驚きを禁じ得ない。ひととおり目を通すだけでも大変な作業だ。祥子は、まずは日本人が関係していそうな会社だけを抜き出すことにした。
 夢中で資料に向き合い、一息ついたときにはすでに五時間ほどが経っていた。時計を見ると夜の八時、窓の外にはすっかり帳が降り、隣のビルには黄色い明かりが煌々と灯っている。
 少し考えた後、祥子はパソコンの電源を落とし、黒いナイロン製のバッグにそれを押し込んだ。長丁場だ。まずは英気を養って、続きは自宅ですることにした。
「お先です」
 反応がないことくらいわかってはいたが、いちおう声をかけた。あんのじょう皆仕事に夢中で、顔を上げる者さえいない。せいぜい編集長がチラリと視線を向けたくらいのものだ。とはいってももう慣れっこで、そんなことはまったく気にならない。ここはそういう世界なのだ。
 浜松町駅で山手線に乗り、品川駅で東海道線に乗り換える。横浜駅で下りると、少し歩き、「七(しち)転(てん)八(はっ)起(き)」という名前の定食屋ののれんをくぐった。
「おう、いらっしゃい」
 馴染みの声がする。禿げ上がった頭に白いハチマキ。店の主(あるじ)がカウンターの奥の厨房で目尻にしわを寄せ、いかにも人の良さそうな笑顔を向けている。
「ずいぶんはええじゃねえか。で、いつものやつからいくかい? キンキンに冷えてるぜ」
「ううん、今日はお酒はなし。鯖の煮付け定食をお願い」
「おや、めずらしいじゃねえか」
「しょうがないわ。これからまだ仕事だし」
 祥子は二人がけの小さなテーブルの椅子を引いた。腰を下ろすと、小太りの中年の女将が冷たいお茶の入ったグラスを運んできた。
「お疲れさま。といっても、まだこれから仕事だったわね。大変ね、キャリアウーマンってやつも」
 これまた人の良さそうな笑顔でそう言うと、女将はグラスをテーブルの上に置いた。
「からかわないでよおばさん。キャリアウーマンどころか、とんだ肉体労働よ」
 祥子が色白の顔に苦笑いを浮かべると、女将は豊満な体を揺すって笑った。
「なに言ってるの、今をときめくジャパン・ウィークリーの記者が」
 すると店の奥から主の怒鳴り声が飛んできた。
「こら登(と)美(み)子(こ)、迂闊なこと言うんじゃねえ。誰かに聞かれたらどうすんだ。なんたってアレだ、ト、トップシークレットってやつだよ」
「いいのよ、おじさん。他(ほか)にお客さんもいないことだし。あっ、ごめんなさい――」
 あわてて取り繕うも、時すでに遅し、主が皮肉交じりにぼやいた。
「ああ、どうせ客は祥子ちゃんだけだよ」
 機嫌を損ねた子供のような物言いに、つい祥子は吹き出してしまった。
 しかし店の主人の言ったことはそう間違ってはいない。ジャパン・ウィークリーはここ数年のスクープの連続で、世間に知らない者のいないくらいにその名声を馳せていた。とうぜん恨みも買っているだろうし、その記者であるとの噂が広まれば色々とやりづらくなるのは想像に難くない。
 食事を終えると定食代の五百円を支払い、祥子は店を後にした。そこから歩いて五分ほどのところが、彼女の住むアパートだ。閑静な住宅街、と言いたいところだが、実際にはどぶ川沿いに安アパートの立ち並ぶ古びた街だ。薄闇を照らす街灯の明かりに、「リバーサイドハイツ・横浜東」と書かかれた表札がぼんやりと浮かんでいる。
 四十平米の1LDKで家賃八万円、ターミナル駅から徒歩十五分という立地条件を考えれば格安だ。もちろんそれには理由がある。リバーサイドとは名ばかりでアパートのそばを流れるのは異臭を放つどぶ川だし、アパートはいまどきめずらしいモルタル造りの二階建てだ。しかも築二十年ときている。といっても安アパートに住んでいるのは、お金がないからというわけではない。実際彼女の収入は世間の一般サラリーマンのそれをはるかに超えていたし、貯蓄もそれなりにある。彼女がここを選んだのは、ただ、必要以上の贅沢を好まないという彼女の性格によるもの以外に何もない。
 アパートの外階段を乾いた音を響かせながら駆け上り、祥子は鼠色のドアに鍵を押し込んだ。ドアを開け部屋に入ると、白いスニーカーを脱ぎ捨て、まっすぐ机に向かった。バッグから引っ張り出したパソコンを机の上に置き、電源を入れ、さっそくキーボードを叩き始める。
 ようやく一息ついたのは、それから五時間も過ぎてからだった。時計を見るともう深夜二時。
「お風呂にでも入るかな」
 ひとり呟くと、祥子は腰を浮かした。
 熱いシャワーを浴び、濡れたストレートの黒髪をバスタオルで拭きながら、祥子は小さな冷蔵庫の扉を開けた。うっすらと白く霞む狭い空間。そこにはびっしりと缶ビールが並び、それ以外には何も見当たらない。その缶ビールをひとつ掴むと、彼女はふたたび机に戻った。ビールに口をつけ、後回しにしておいたメールのチェックを始める。といってもほとんどがゴミ箱行きだ。それもそうだ、重要な案件であればとっくに電話で連絡がきているに違いないのだ。メールのチェックを済ませると、今度はニュースサイトを開いた。彼女の部屋にはテレビはない。理由は至って簡単だ。スポンサーの利害によってよけいな脚色がされた情報は、彼女のような者にとっては百害あって一利なし。調査の勘を鈍らせるだけなのだ。
 今夜の、いやもう朝方といった方がいいかもしれない――のネットのニュースサイトは例の政治家の不祥事の話題で持ちきりだ。そう、つい昨日まで彼女が追っていた、あの政治資金の私的流用の事案である。
「まったく遅れてるわね……」
 彼女に言わせれば、それはもはや過去の出来事に過ぎなかった。もう完全に詰んだ将棋のようなものだ。この先は放っておいても勝手に話が進んでいくに違いない。しかもそれは、たかだか強欲な政治家ひとりに引導を渡すに過ぎないことだ。でも今度の事案はスケールが違う。世界の常識をひっくり返してしまうほどの、今世紀、いや、近代経済史上最大の大事件に発展する可能性すら秘めているのだ。
「おもしろくなってきたわね」
 早くも半分近くに減った缶ビールを片手に、祥子は、微かに火照った顔に不敵な笑みを浮かべた。

2017年6月16日金曜日

KENPに関する近況報告(amazon Kindle Unlimited)-5月度-

 Kindeの読み放題(amazon Kindle Unlimited)の5月度の既読ページ数(KENP)が判明しました。約54,300でした。
 この数ヶ月をまとめますと、
 2月:40,600
 3月:42,700
 4月:55.100
 5月:54,300
 となり、4月に比べると若干減ったものの、上昇傾向にあることは間違いありません。
これを(KENPが始まった)一年前から見ると、

 このように、確実に増加しているのがわかります。ちなみに6月はさらに勢いを増しており、半分が経過した15日時点ですでに30,000を超えております。
 1年以上も新作を出さないでいてこのような状況ですから、おそらく読み放題のユーザー数が予想以上に増加しているものと思われます。
 以上、簡単ではありますが、KENPの報告でした。

 ところで新作の方ですが、今のところ7月1日発表の予定に変更はありません。しかし予想外にページ数が増えてしまい(すでに(文庫本換算で)320ページを超えてしまいました)、いまだに初稿が終わっていない状況です。この先の進捗如何によっては延伸もあり得ることをご承知おきいただきたく存じます。

2017年6月3日土曜日

新作発売のお知らせ(予告)

2017年7月1日 発売予定

 アマゾンKindleストアにて発売します。読み放題(Kindle Unlimited)プログラムの対象になります。


 粉飾決算、横領、脱税、法令違反―― 世間を騒がす企業不祥事の数々。しかし皆の目にする報道はおよそ事実とはかけ離れた虚像にしか過ぎない。  
 ニュース等では語られない生々しい経済の実態。  
 利益至上主義を正当化するための現代資本主義、それを構築し維持する資産家や権力者、あるいは既得権益者たち。遠心分離機にかけたように富は二極化し、道義や誠意は、拝金主義の下に蔑ろにされる。 
 本作品は、架空の経済小説である。と同時に、経済・社会の矛盾に焦点を当て、その矛盾に果敢に立ち向かう人たちの熱い姿を描いた、人間ドラマでもある。
※発売日は著者の都合により前後する可能性がございます

2017年5月16日火曜日

KENPに関する近況報告(amazon Kindle Unlimited)-4月度-

4月度のKENPの実績が出ました。
 55,114
でした。
2月が40,000、3月が42,000でしたから、少しずつ増えているようです。
新作の発売まで今の調子でなんとか頑張ってもらいたいものです。

なお新作の進捗状況としましては、なかなか思うようには進まず、発表はまだ一ヶ月くらい先になるかなといったところです。

以上、近況報告でした。

2017年5月4日木曜日

KENPに関する近況報告(amazon Kindle Unlimited)

ゴールデンウィークのただ中で、毎日晴天が続き、これ以上の行楽日和はないように思われますが、小生は暗い部屋に閉じこもり、執筆オタクの日々を過ごしています。しかしその割には思うように進まず、新作を公開できるまでにはまだ1ヶ月ほど要するものと思われます。
ところで既存作品の売り上げはというと、まあこれもあまり芳しくないわけですが、ことKENP(amazonの読み放題プログラム:Kindle Unlimited)の方は、意外にも順調で、むしろ上昇傾向にあるくらいです。もしかするとプログラムの契約者が増えているのかもしれませんね。
以下が、この3ヶ月間のKENPのグラフになります。
それではまたこれから執筆に取りかかりたいと思います。(正直言って、もう疲れました……)

2017年4月1日土曜日

東芝に関する新たな動き

先日臨時株主総会にてメモリ事業の分社化を決議した東芝ですが、ここへきてまた新たなニュースが飛び込んできました。
一つはどちらかというと良いニュースで、同社のメモリ事業の売却先を決める入札になんとグーグルやアマゾンも参加しているらしいというものです。

グーグル・アマゾン入札、争奪戦に…東芝半導体


これら資金力のある大企業が参加することで売却額がさらに高騰する可能性があり、先日Blogで書いたように債務超過を解消するのに必要な1兆2千億(※税金も考慮すると実際にはどうやら1兆5千億らしい)の資金を調達することも夢ではなくなりそうです。
これでなんとか最悪の事態は回避できたかな、と思っていた矢先、もう一つのとんでもないニュースが報じられました。
なんと今月11日が期限の決算発表(すでに2度延期している)が、また延期になるのではないかというのです。

東芝、決算発表3回目の延期の公算 監査法人が疑義=関係筋


まあこれだけの規模の会社となると、東証も延期を認めざるを得ないのではと思ってしまいますが、問題は決算の延期の理由です。

「監査法人側からの指摘で、15年度の決算見直しの必要性が浮上しているとみられている」

記事には明確には書かれていませんが、15年度の決算を修正した結果、もし仮に1年前にすでに債務超過になっていたとしたら大変な事態になります。なにしろ東証の上場廃止基準の「2期連続債務超過」に抵触してしまうことになるのです。16年度の債務超過で2部降格が決定している同社ですが、こうなるとそれどころの騒ぎではありません。
また仮に15年度の決算が債務超過でなかったとしても、もう一つの心配が残されます。それは先日発表した16年度の決算の赤字(東芝、29年3月期は1兆円の赤字見通し)がさらに膨らむのではないかという懸念です。そうなると債務超過を解消するのに必要な資金が1兆5千億円をさらに上回り、ますます再生の道が険しくなると言うことです。

いずれにしても、日本経済に多大なる影響を与えかねない同社の動向からしばらくは目が離せません。


2017年3月29日水曜日

東芝によるウェスチングハウスの破産決定に思うところ

東芝が米国子会社ウェスチングハウス・エレクトリックの米連邦破産法11条(民事再生法に相当)の適用申請を決定したと報じられました。


東芝、29年3月期は1兆円の赤字見通し


これにより平成29年3月期連結決算の最終損益が1兆100億円の赤字となり、6200億円の債務超過に陥る見通しとのこと。
既報によれば東芝はメモリ事業の売却によって債務超過を解消する算段のようです。そのメモリ事業の価値については1兆円を超えであろうとかの話もあり、うまくいけば一気に債務超過を解消し、東芝の描く再起の青写真も現実味を帯びてくるような気もします。
しかしふと思ったのが、仮に1兆円で売却できても、債務超過は解消しないのではないか、ということです。どういうことかというと、0円のものを1兆円で売れれば確かに1兆円の利益が得られるでしょうが、そもそも同社のメモリ事業の簿価が0円であろうはずがないということです。しかしどんなにググってもそのことに触れたニュースが見当たりません。と思っていたところ、こんなのを見つけました。

(株)東芝の事業分割の対象となる関係会社が判明


この記事によると、同社が売却を予定している『東芝メモリ』の簿価は、

資産価値 = 資産合計7,537億円ー負債合計1,614億円 = 約6千億円

のようです。
つまり6千億円のものを売るわけですから、6200億円の債務超過を解消するためには、

6200億円 + 6000億円 = 1兆2千億円

でメモリ事業が売れなければならないことになります。
まあ僕がふとそう思っただけで、本当にそうなのかはこれから調べていきたいと思いますが、もしそうだとすれば、世間で言われているほど同社の再生は容易ではないように思うわけです。

ということで、今日はひさしぶりに独り言をつぶやいてみました。

2017年2月15日水曜日

東芝に関する驚愕のニュース

東芝に関する驚愕のニュースが報じられました。同社の3Q決算の発表が延期になった原因である「内部通報」の概要が明らかになったのです。なんと志賀会長とロデリック会長がウェスチングハウスの幹部に対し、東芝にとって有利な会計になるように圧力をかけたというではありませんか。つまり粉飾決算の強要です。
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20170215-00000024-nnn-bus_all

もしこれが事実なら、内部統制が完全に機能していないことを意味し、特設注意市場銘柄にある同社にとって、以下の「上場廃止条件」に該当することになります。

『――なお、当該指定から1年6か月を経過した日(2017年3月15日)以後に、同社から再提出される内部管理体制確認書の内容等を確認し、内部管理体制等について改善がなされなかったと認められた場合は、同社株式は上場廃止となります。』
http://www.jpx.co.jp/news/1021/20161219-14.html

決算発表が延期になった理由も、もしかすると、上場廃止の可能性が極めて高くなったことを受け、その上場廃止のリスクを決算書の『継続企業の前提に関する重要事象』に記載するよう主張した監査法人と、それに反対する東芝側との意見が折り合わなかったからなのかもしれません。